「子どもの事故予防といざというときの応急処置」 (2002年9月20日 白銀公民館)

くば小児科クリニック 久芳康朗

 1歳以上の子どもの死因1位は不慮の事故であり、単なる「不注意」や「親の責任」としてではなく、子どもの最大の健康問題として科学的に予防していくことが必要です。「目を離さないで」では、事故はなくなりません。少し目を離しても大丈夫な環境づくりが大切です。

 大きな事故は氷山の一角であり、幼児の死亡1件に対して入院65件、外来受診4,500件、家庭で処置10万件、無処置で様子をみる事故が19万件おこっています。スウェーデンのレベルまで事故が減少すれば、年間500〜600人の子どもの命を救うことができます。

 予防する必要性の高い事故は、1)重症度が高い事故(溺水、交通事故)、2)発生頻度が高い事故(誤飲、やけど)、3)増加している事故、4)具体的な解決方法がある事故です。

 溺水は特に重症度が高く不慮の事故死の2割を占め、0〜1歳の溺死の8割、年間に70〜80人の乳幼児が浴槽で溺れて亡くなっています。洗い場から浴槽の縁までの高さが50cm以下の浴槽は転落する危険性が高いことを認識し、2歳になるまで残し湯は厳禁とします。入り口に鍵や留め金をつけたり、子どもだけで入浴させないようにします。バリアフリーの考えで浴槽の縁が低い家庭が増え、災害対策で残し湯が推奨されており、溺水の危険性はむしろ増加しています。ビニールプールやバケツなど、10cmの水深でも溺水は発生しています。

 0〜19歳の不慮の事故死の6割は交通事故です。チャイルドシートは2000年に義務化されましたが、事故例での装着率は低く、不適切な装着も多いようです。上端を思いっきり引っぱって動くのが3cm未満なら適切に装着され、3〜10cmだと緩く、10cm以上動くときには役に立ちません。

 口径が39mm以下のものは誤飲したり窒息をおこすので、床面から1m以内の場所には置かないようにします。タバコ誤飲の70%は0歳児で、8か月が最も多く、電話相談件数の16〜17%で毎年トップです。根本的な対策は乳幼児の環境からタバコを一切なくすことです。

 気管支異物はピーナッツが多く節分の後に多発します。3歳になるまでピーナッツは食べさせないようにし、放り投げて口に入れるような遊びもさせないようにします。

 ベビーカーからの転落予防にベルトを忘れないようにします。歩行器やクーファンは危険かつ不必要で、カナダでは歩行器の販売は禁止されています。

 毎年、子どもの3人に1人はやけど(熱傷)をしており、そのうち1割は医療機関にかかり、その1割は入院、入院した人の1割は重症で、その1割は死亡してると言われています。やけどの80%は家庭内で 、そのうち50%は台所でおきています。加湿器や炊飯器の蒸気によるやけどで手指の拘縮を残すことがあります。

 乳幼児突然死症候群(SIDS)は事故ではありませんが、乳児期の死亡原因の第2位で、1)あおむけ寝、2)タバコを吸わない、3)なるべく母乳栄養にするなどの予防対策によりSIDSを減らすことが可能です。

 救急蘇生のABCについて一通り解説し、ハイムリック法、昏睡体位、やけどや出血・鼻出血の対処法などについても説明しました。

 家族の喫煙は誤飲やSIDSだけでなく、流早産、低身長、低知能指数、喘息性気管支炎や中耳炎、受動喫煙によるガン、将来の喫煙習慣など、子どもの生涯にわたって深刻な影響を及ぼします。家族全員の禁煙を強くお勧めします。

 予防接種で防げるはずの麻疹で年間約80人の子どもが亡くなっており、青森県は全国ワースト1の流行県になりました。1歳の誕生日が過ぎたらすぐに麻疹の予防接種を受けましょう。

参考ページ

子どもの病気とケア くば小児科ホームページ