健康教室抄録(はちのへ医師会のうごき 掲載予定) 1999年7月7日(水) 総合福祉会館

「子どもに多い病気とそのケア」

くば小児科クリニック 久芳康朗


 育児やこどもの病気に関する情報はあふれていますが,実際にはあまり役に立たないことも多い.子どもの具合が悪くなったときに,情報に惑わさなように,普段から親の目を養い,親としての勘を磨いておくことが大切です.食欲・哺乳,睡眠,機嫌が目安になります.

 [発熱]熱は体の防御反応であり,原因ではなく結果であることを理解して,熱が出てもあわてずに,寒いときには温め,暑いときには冷やし,水分を少しずつとらせるといった当たり前の看病をしてあげれば大丈夫です.

 解熱鎮痛剤はあくまで対症療法であり基本的には必要ありませんが,使う場合でも,使いすぎや低体温に注意しながら,子どもの様子をみた上で判断してもらうことになります.

 インフルエンザの二峰性発熱の例を示し,あらかじめ経過を予測して説明し,自分で熱型をつけて確認することで,時間外に熱だけであわてて受診したりせずに済むようになります.

 [突発性発疹]はじめての熱であることが多く,熱性けいれんや脱水症に注意すれば,薬に頼らずに自然経過を見守ることができます.

 [咳と鼻みず]風邪の90%以上はウイルス性で,特効薬はなく,何度も風邪をひきながら免疫をつけていくことになります.家庭では安静・睡眠,保温,栄養を原則として,処方された薬を飲ませながら,合併症の有無に注意して通院させるようにして下さい.

 乳幼児で,喀痰が多くて喘鳴や咳込み,嘔吐がみられるときには,加湿や上体挙上(抱っこ)などの対処が加わります.鼻づまりには加湿や鼻の吸引も有効です.

 喘鳴を繰り返す子の中には,喘息,アレルギー,喘息性気管支炎 ,「保育園かぜ」,「虚弱児」などが含まれています.3歳と6歳が目標と考えています.

 [腹痛・嘔吐・下痢]多くはウイルス性の胃腸炎ですが,細菌性食中毒,腸重積,急性虫垂炎などにも注意が必要です.嘔吐が続いているときに水分をとらせると胃液が失われて脱水が急激に進みます.嘔吐から下痢へという症状の移り変わりを理解し,当初は「吐いたら飲むな」を原則として,その後は水分補給,食事療法へと進めていきます.食べ物は便の硬さに合わせ,回復期にはお粥が最適です.

 急激な腹痛の原因が便秘にあることをしばしば経験します.やはり食事療法がメインです.

 [夏かぜ]手足口病やヘルパンギーナは,基本的には軽症の夏かぜで,症状が改善していれば登園.登校も可能です.しかし,近年マレーシア,台湾とエンテロウイルスによる死亡例が相次ぎ,今後も流行状況に注意が必要です.

 [予防接種で防ぐことのできる病気]麻疹は重症化する感染症で,予防接種が有効であるにも関わらず日本は麻疹の汚染国で,八戸でも昨年来流行が続いていました.1歳を過ぎたらできるだけ早期の接種が勧められます.  風疹は診断がやや曖昧になりがちな疾患で,中学生の予防接種率が激減しており,先天性風疹症候群の多発が危惧されています.

 [スキンケア]汗疹や湿疹が夏に悪化する場合は,汗や汚れ,細菌の二次感染などが要因となっており,シャワーの回数を増やして,必要に応じて保湿剤や外用薬を塗って対処します.

 [事故予防]チャイルドシートは装着率が低く,誤装着にも注意が必要です.35mm以下の物は窒息や誤飲事故を起こす可能性があります.事故を起こした親は必ず「いつもはちゃんと始末していたのに」と言います.タバコ誤飲には禁煙,お風呂での溺水にはお湯を残さないなど,根本的な対策が必要です.クーファンや歩行器は危険な育児用品と言えます.

 [乳幼児突然死症候群(SIDS)]SIDSは乳児死亡の第2位で,窒息事故ではありません.仰向け寝で育てる,暖めすぎない,周囲で煙草を吸わない,妊娠中に煙草を吸わない,母乳で育てる,一人にさせないといった対策でSIDSを減らすことができます.

 [こころの育児]少子化の時代に子どもたちは親の過保護と放任という育児態度の下で,遊びの中で耐性を発達させる機会を持たずに育ち,学級崩壊,いじめ,不登校,少年犯罪などの問題を引きおこしています.子どもを愛し,愛されて信頼されていることを実感させ,目にみえないものを大事にして育て伸ばすことが大切です.その際に,父親の重要性があらためて見直されています.子どもは親を見て育ちます.「Q&A こころの子育て」(河合隼雄)をお薦めしています.


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