医学生の頃、バイクで家に帰るのには、2つのルートがありました。山越え のルートと海岸沿いのルートです。山越えのルートは約150km、海沿い のルートは190kmです。当然、山越えのルートが中心になります。深夜 の山越えの約2時間は、海沿いの約4時間に比べて、魅力的です。でも、冬 の山越えはギャンブルになります。雪です。高いところで、海抜千メートル 前後ありますので、運が悪いと路面に雪が被っています。たいていは轍に助 けられてセーフなのですが、その時は完全に路面が凍結し雪が被っていまし た。タンクローリーは尻を振りながら坂を降りて行きます。直前のクーペは 溝に落ちましたが、勢いで走り去って行きました。バイクは私しかいません。 クーペが溝に落ちたあおりで、私はばったりと転倒してしまいました。スピ ードも出てなかったので、かすり傷ですみました。でも、この世の果てにと り残された気分でした。そこに、後ろからやって来たのは、何と、6人乗り の乗車スペースに5人の屈強なおじさんが乗り、荷台にはちょうどバイク一 台分のスペースが空いていて、バイクを積み込むための渡し板とウインチを 積んだトラックが通りかかったではありませんか。おじさんたちはあっと言 う間に私とバイクを救出して、 家まで送ってくれました。 私は運が良いと思いました。開業の時も近い状況がありました。