1997年 第43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 01 02 03 04 05 06週 インフルエンザ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 42 146 131 水痘 1 2 2 2 1 4 7 3 3 6 2 4 5 4 4 5 8 感染性胃腸炎 7 5 6 6 7 11 8 20 13 23 3 18 14 13 16 15 7 乳児嘔吐下痢症 2 1 1 1 2 1 2 2 1 1 1 4 1 0 2 7 3 突発性発疹 1 2 1 4 1 0 4 6 4 5 2 3 3 2 3 1 3 流行性耳下腺炎 7 10 7 13 8 10 5 6 7 5 7 11 0 3 4 2 2 溶連菌感染症 0 3 0 1 2 4 3 3 7 3 0 0 0 2 0 2 0 手足口病 1 0 0 0 0 0 1 1 2 2 0 0 1 0 1 1 0 ウイルス性発疹症 2 0 1 1 2 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 異型肺炎 0 1 1 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 (この表は等幅フォントでご覧下さい) インフルエンザによると思われる死亡例の報道がありましたが,正直言っ てこれくらいの流行の規模になればあっても全然不思議ではありません. 全国で感染者が100万人として10人が死亡とすると,10万人に1人. 10万人の子供の中には基礎疾患がある子もいるし,いろいろな体質の子が いますからインフルエンザのような強い感染症にかかれば何が起こるかわか りません.とはいっても,これまで乳幼児か高齢者という頭がありましたか ら,小学生というのは意外な気もします.今回の印象としては,感染力は強 い,経過はさほどひどくないが,それでも高熱が2−3日,咳は1週間まで かなり出る,というのが実際に診療してみて感じるところです.今週になっ て小学生は明らかに減って,乳幼児と家族(大人)が目立ってきました.小 さい子では典型的な二峰性の発熱もみられています.今年は老人の死亡例は あまり報道されていませんが,これは本来ニュースにする必要はあまりない んですよね.ここまで書くと言い過ぎかもしれませんけど.(06) → 院内版感染症情報 第05週(2/1-2/7)→インフルエンザ蔓延
淳子 さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 19日 木曜日 10:03:40)
おはようございます。今朝のNHK「生活ホットモーニング」を見てインフルエンザって 恐い病気なのねーと再認識。内容は2歳の幼児が38・5度の発熱から4日後にA型ウイルスの 脳炎で亡くなったというものでした。普通の風邪や、突発発疹でもこのぐらいの発熱はあるし、 どの程度になったら命に関わるほど危険な状態なのか判断するのは、とーっても難しいことですよね。 とにかく、熱がでたら早めの受診なんでしょうね。
くば さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 19日 木曜日 20:15:30)
>とにかく、熱がでたら早めの受診なんでしょうね。 よくマスコミなんかでも「早めの受診」と言われるのですが,実際問題として インフルエンザは対症療法に終始するわけですから(といいつつ抗生物質も出 したりしてますが),早く受診したから治るということはないわけです. 要するに,あまり手だてがない. 来年からは,漢方薬を主体にしようかとも思うのですが(毎年そう思っている ...),これも年長児にしか使えないし. 肺炎・気管支炎は急速に進行したとしても目に見えますが,脳炎・脳症はこわ い.これで確実に毎年何十人か何百人かが亡くなっているわけです. 老人では超過死亡は大きな流行だと1万人くらい. 報道されるのはその一角ですから,それだけをとらえてどうこういうのはナン センスなわけです. インフルエンザを風邪の一種のように軽視しているのは日本人だけですね. 昨年も,「これに懲りてきちんと対策をとるようになるのでは」と思ったの ですが,今年も同じ事の繰り返しです.
くば さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 19日 木曜日 20:21:10)
●2月19日(木)のデーリー東北の記事を読まれた方へ 八戸市の保健課から「予防接種を早めに受診するように」という呼びかけをして いるという記事がでましたが,はっきりいってもう遅いと思います.また,流行 も既に終盤にさしかかっております. この件に関して,市および医師会に下記のような申し入れを送りましたので, 少し長いのですが参考までにこちらに掲載しておきます. ----------------------------------------------------------------------- ■本日の記事に関して市と医師会に抗議します 今朝のデーリー東北の記事をご覧下さい.市の保健課から市民にインフルエンザの 予防接種を呼びかける内容の記事が載っているはずです.そこの接種医療機関のリ ストが掲載されています. 実は本年1月にインフルエンザ実施医療機関のアンケートというのが回ってきて, これが多くの問題を含んだ内容だったため,ここで取り上げようと思いながら書き そびれていました.しかしアンケートの回答に付記してその問題点を簡単に書いた のつもりだったのですが,見事に無視されてしまいました. ●まずは現状の確認から, 現在のインフルエンザの予防接種は定期接種からはずされて任意接種となっており ,行政は何ら関与していません. 我々はかかりつけ医の立場から患者さんに対しては院内報などで情報をあたえて接 種を呼びかけていましたが,実際には主に喘息などのハイリスクの希望者のみに慎 重に接種を行っています.この辺の経緯は当院の院内報('97.11〜'98.02)をお読 みいただければわかると思います(http://www.kuba.gr.jp/info/shinryo.html). つまり,医学的にはインフルエンザの予防接種は推進していかなくてはいけないも のと考えています.その上で,現行のワクチンについても他と比べて危険性が高い わけではありませんが,経鼻接種などのより改良されたワクチンが早期に登場して くることを待ち望んでいるわけです. しかし,もし接種で事故が起きた場合は,任意接種では通常の薬の副作用と同じ扱 いになり行政は何ら責任をとりません. そのような立場で医療機関を特定してそこを受診するようあたかも行政から勧めて いるかのような記事を書かせるのは無責任な行為と言わざるを得ません.この記事 を読めば市民は他の定期接種と同じように市が行う予防接種だと思うことでしょう . ●また,今年の流行に関しても, 当院の統計でもインフルエンザの流行は2月第1週がピークで,現在(19日)流行 は急速に終息にむかっており,このような時期に予防接種を呼びかけることは全く の間違いとは言えないにせよほとんど無意味と思われます.つまり内容的に誤解を まねきかねないものを市民に呼びかけているということになります. また,現在流行中のA香港型の株(佐賀型)は今年のワクチンの株(武漢型)から 変異したものであり,当院のスタッフへの予防効果をみると明らかに軽症ですんで おりある程度の効果は認められているものの,「予測とはずれた」ワクチンを流行 がピークを過ぎてから広く市民に勧めるという行為に果たして意味があるのか.お そらくそのようなことは全く考慮されていないものと思われます. 医学的に「全くの誤りではない」と書いたのは,年長児や成人,特に老人の場合は ,過去の免疫記憶が残っているため1回の緊急接種でもある程度の効果が期待でき るとされているからです.しかし,(担当者及び記者が)そのような知識を踏まえ た上での記事とも思えません.ただ一般論として書いているだけのようです. おそらく県内の死亡例の報道などがあって慌てふためいて対応しようとしたのでし ょうが,専門家であればある程度予想できる事態であり,もし(行政側からでなく )医学的な観点から予防接種を呼びかけるのであれば,11〜12月頃までというのが 常識です.今頃になって何を言っているのでしょうか. また,今年は全国的にワクチンの流通が悪く(要するに需要が多く),当院にはわ ずかに在庫はありますが,もしこれから大量の希望者が出てもリストアップされた 医療機関で全ての需要をまかないきれるとは考えられません.そのような状況を知 って書いたとも思えません.幸い本日は一件の問い合わせもなく,当院に通院して いる方は新聞報道で慌てたりする人はないものと思われ安心していますが,このよ うなことがこれから無断でおきると非常に困りますので,医師会として然るべき対 処をお願いしたいと思います. ●要するに全てが泥縄式の対応に終始しているわけです. 元をたどると,接種に協力するという「日本医師会と厚生省の合意」というのがあ るらしいのですが,我々は何ら知らされておりません.医師会側は無条件に接種に 協力するというのではなく,接種を実施する者の意見を踏まえた上で,言うべき事 は国に申し入れをしていただかないと困ります. 医療機関が本当の緊急時(今年のような通常の流行ではなく,新型インフルエンザ による大流行)の時に安心して接種できるように対応を考えるのが医師会の努めと 考えますが,現制度のような国や市町村が関与しない任意接種のままで,無責任に 医療機関を市民に広報し,事故があったら医療機関で対処せよというのは医師会の 行う行為とは思えません. 大流行の時にだけ国が定期接種の臨時接種として行うのか,昨年今年と泥縄式に対 応してきた事を反省して任意接種から定期接種の臨時接種に戻すのか. 現行の任意接種のままで新型インフルエンザの流行時に接種に協力せよということ だけは絶対に避けていただかなくてはいけません.もしそのような事態になれば, 「協力医療機関」のリストからははずさせてもらうことも考えなくてはいけません (その場合でも患者さんへの接種は例年通り行いますが). そもそもアンケートに回答したのは,新型インフルエンザの緊急接種のときに市民 に知らせることが目的であり,現在の制度のまま「接種協力」医療機関にリストア ップされる事には反対であるとアンケートに明記したつもりだったのですが,全く 無視されてしまいました.まして,今年のような「通常規模の大流行」の際にこの リストが使われることになるとは全く聞かされておりませんでした. 今回の記事に関しては,医師会でこのような記事が掲載されることを承知していた のでしょうか.もし承知していたのであれば医師会にも抗議したいと思います. 医師会長および担当理事を通じて市および新聞社に上記の趣旨で申し入れをしてい ただきたいと考えます. 善処の程よろしくお願いいたします. 1998.02.19 くば小児科クリニック 久芳康朗
くば さんからのコメント
( Date: 1998年 2月 20日 金曜日 22:25:53)
●経過報告 (医師会のMLに載せたものです) 早速担当理事のN先生から市の方へ連絡していただきました. お手数をおかけしました.迅速な対応に感謝します. それによると,市の方へは市民病院のN先生,T先生やM先生のほかに 2〜3人の先生方から注意があったということです.やっぱり今頃になって予防接 種を呼びかけるのはおかしいですよね,どう考えたって(内心私だけでないと知っ てホッとしているところ). まあ,予想通りお役所仕事でした. 県から「インフルエンザ予防対策について」という通達が16日付で出されて八戸 市では18日に受け取っている(2日もかかってますね(^^;).その中で,「今後 も地域住民への予防対策の徹底について周知を図って下さるようお願いします.」 とあり,その後に「なお,全国のインフルエンザ様疾患患者及びウイルス分離状況 並びに県内の予防接種実施医療機関名簿を送付します」と付け加えられています. これを受け取って早速新聞に載せさせたというわけで,市役所のお仕事としては一 点の曇りもないわけです.実に単純明快. 振り返って,問題点をまとめますと 一連の予防接種訴訟の敗訴と世論に屈して,予防接種法改正の際にインフルエンザ をはずして任意接種に格下げするというミスをおかした. その結果として(当然のことながら)予防接種は殆どされなくなり,供給能力も激 減した. 現行の予防接種は重症化を防ぐ効果は十分にあるとされている(死亡や重症例の中 で予防接種実施者は皆無). また,その副反応は皆無ではないが他の不活性化ワクチンと同程度とされている. 国際的には新型インフルエンザの出現に備えて体制づくりをすすめているのが現状 . 折しもニワトリから感染した香港の新型インフルエンザが世間を騒がせた. 昨年(1996-97)と今年(1998)の2シーズンに渡って通常規模の流行の中で死亡者 の報道が目立った. 厚生省でも昨年は「新型インフルエンザ対策」をまとめて来年度予算にも組み込ま れているが,その中心は実は予防接種である. しかし,その対策の中で,予防接種を国が行うのか何ら記されておらず,肝心なと ころをぼかしている. その曖昧な姿勢のまま,毎年の流行の際に「死亡者が出てから」対応しようとして いる. 新型インフルエンザ流行の際も,ワクチン製造能力は絶望的に低くおそらくワクチ ンは役に立たないだろうと考えられる.つまり流行にまかせるしかない. それでは根本的な解決策は? 一番はじめに戻るしかありません. つまり国でインフルエンザの接種を制度化して(臨時接種→ハイリスク者や医療関 係者や希望者に接種),予防接種の効果を世間に認めさせるようにすること.そし て,万一事故が起きた際は責任を持って対応すること. もう一つは,接種方法の改良で,経鼻接種により安全で効果が高くなることが期待 されている. というわけです.任意接種のままで対応をしようという態度にはちょっと腹が立ち ますね.そのやり方の中に医師会が組み込まれるのではなく,現場の声を反映させ るべく努力していただきたい. こういった声を直接反映させるために情報システムをつくろうと(日医が)言って いるのであれば大歓迎なのですけどね.まさか上意下達の手段だけということはな いでしょう.