■ はじめに(喘息に対する基本的な考え方)
- 気管支喘息(ぜんそく)(以下喘息と略します)は,子どもの慢性疾患の中で最も多く,小児の約5%が喘息であるといわれています.
- 子どもの喘息の90%以上はアレルギーの関与が認められ,その中でもダニに反応することが多いのですが,喘息発作の原因はアレルギーだけでなく,かぜ(ウイルス感染),煙などの空気汚染,気象の変化,ストレスなど様々なものが発作の誘因となります.
- 子どもの喘息は大きくなれば治ると言われていましたが,実際には寛解(ほとんど症状のない状態)になるのが7割程度であり,残りは思春期,成人まで持ち越してしまいます.また,寛解した人たちの中にも,成人になってから再び発作を起こす場合もあります.
- 喘息を完全に治すことは難しいのですが,コントロールすることはさほど難しくありません.
- 喘息は,発作と無症状の時期をくり返しますが,無症状の時でも喘息が治ったわけではなく,気管支が過敏な状態(気道過敏性)や気道の炎症が持続していることがわかってきました.
- 喘息の発作は喘息という氷山の一角であり,喘息の治療は,発作がおきてから抑える「対症療法」ではなく水面下にある炎症反応を抑え発作を起こしにくくする「予防的治療」が中心となります.
- 予防的治療としては,原因・誘因の除去(環境調整など)と薬物療法(主に抗炎症薬の定期的吸入)が主体となり,これに身体鍛錬(水泳などの運動療法,冷水浴のような皮膚の鍛錬など)が補助的な役割として加わってきます.
- 喘息の程度は軽症,中等症から重症,最重症まで様々であり,経過や治療はその子の症状により違い一概には言えません.
- 喘息の患者の多くは軽症〜中等症ですが,この人たちの中には診断がついていなかったり,管理・治療が不十分だったりすることが多く,むしろ重症の患者さんよりも問題になる場合があります.
- 喘息の子どもは学校生活や行事等で制限を受けるなどQOL(Quality of Life)の低下をきたしていることが多いのですが,適切なコントロールを行うことにより喘息のない子とほとんど変わらない生活を送ることができるようになります.
- 喘息の管理・治療の中では,家庭でのセルフ・ケアが非常に重要です.
- そのためには,患者さん自身(本人や保護者)が喘息に対する知識を十分に持つことが必要となります.
- 以上をまとめると,ぜんそくに対する基本的な考え方の要点として,
- 個々の発作の治療と長期的な治療の違いを理解して管理すること
- 環境整備などの原因対策をとること
- 医療機関,家庭,そしてこどもの社会生活(保育施設から学校まで)の三者の連携が必要なこと
- その結果として患児のQOL(quality of life)を向上させることが目標となります