■ はじめに(アトピー性皮膚炎に対する基本的な考え方)
- むずかしい話をする前に,まずここに書いたことだけはお断りして理解いただきたいと思います.
- アトピー性皮膚炎(以下,アトピーと略)は慢性の経過をたどる病気です.
- 残念ながら,短期間ですっかり治るということはありません.
- アトピーの子は全国的に増加してきており,「現代病」「文明病」とも言われています.
- アトピーなどのアレルギーに対して,これを異常に心配し過敏に反応するいわば「アトピー・アレルギー」とでも言えるような状況が広がっており,社会的に問題となってきています.
- アトピーについては,偏った考えに惑わされない「正しい知識」を持つことが大切になります.
- 子どものアトピーにはアレルギーが関与している場合が多いのですが,アトピーの原因はアレルギーだけではなく,様々なものがアトピーを悪化させる因子として知られています
- 現在,標準的な治療はありますが,それだけではコントロールがむずかしい場合もあり,全国各地で多くの治療法が工夫され行われています.逆に考えれば,多くの治療法があるということはそれだけアトピーがよく解明されていないということを示しています.
- アトピーの治療の目標は,「治す」ではなく「コントロールする」です.
- コントロールして良い状態を続けることが,治っていく上での大切な過程となります.悪い状態を続ければ,それだけ治りにくく,更に重症化するという悪循環につながります.
- 子どものアトピーは,成長とともに自然に経過して良くなっていく場合が多いのです.自然の回復力を妨げず,重症化させずにみていくことが大切です.
- アトピーの治療は,薬だけではなく,環境調整や生活スタイルの改善など,総合的に行っていく必要があります.
- アトピーの治療は,全員が同じではなく,症状や経過などにより強くしたり弱くしたりしながらやっていくのが普通です.
- また,どんな治療にせよ,そのベースとして「スキンケア」を怠っていると改善しません.
- アトピーの治療は,「この薬一つでアトピーを治す」といった性質のものではありません.
- ですから,民間療法によくみられる「○○でアトピーが治った」という表現には十分ご注意下さい.
- マスコミの報道は,ニュースとなった時点でその治療法が確立されたものとは言えないことが多いという点にご留意下さい.有用なものも多いのですが,治療法の変遷により忘れられたりすたれていったものもあります.
- 一部マスコミにみられる「ステロイドたたき」にもご注意下さい.
- ステロイドはアトピーを治す薬ではなく,おもてに出ている湿疹症状を改善させるための薬です.子どもにステロイドを長期使用することは副作用の点で問題があるのはもちろんですが,過度の「ステロイド恐怖症」はコントロールを難しくすることにもつながりかねません.
- ステロイドは症状が悪化した時に短期間使用し,改善すれば非ステロイド軟膏やスキンケア用剤に切り替えていくようにすれば副作用は問題にはなりません.
- 民間療法を併用する場合は,次の2つの点にご注意下さい.
- 併用したい(している)ということを必ず申し出て下さい.
- 一番最初に高額の出費をともなう療法にはひっかからないようにして下さい!(その治療を行うことで一番メリットがあるのは「業者」です.患者さんではありません.)
- アトピーやアレルギー関連の様々な商品が市場に出回っており,一大市場を形成しております(...簡単に言うと,お金儲けの手段としてあなたの財布の中身が狙われているということ).しかし,その中身は玉石混淆で評価が定まっていないものも多いという点にご留意下さい.
- アトピーの治療=除去食療法ではありません.ただし,乳幼児で食物アレルギーの関与が強く考えられる場合には,一部の食品(おもに卵)を制限する場合はあります.
- 検査で食べ物にアレルギー反応が出ても,全く食べられないわけではありません.成長と共に消化機能も成熟し,食べても大丈夫になっていく場合がほとんどなのです.
- 食生活の面では,和食を中心としたいわゆる「自然食」をおすすめしています.また,「離乳食は遅めに」し,「偏らない食生活」を心がけて下さい.
- なるべくお母さんにもお子さんにも無理のない治療,無理のない生活で管理していかないと長続きしません.
- アトピーの治療に「極端」や「あせり」は禁物です.バランス感覚を持って,少し長くかかるものと考えてアトピーと賢くつきあっていって下さい.お母さんやお子さんの「ストレス」がアトピーを悪化させることがある,ということは広く知られている事実です.
- わからないことやご不満などがあればご遠慮なく相談下さい.お母さんと医療機関との意志疎通が欠けているとアトピーの治療は上手くいきません.
- また,皮膚科など他の医療機関を受診したい場合にはご遠慮なくお申し出下さい.紹介状をお渡しします.
- 詳しい説明は,FAQ集のページをご覧下さい(ただいま準備中です).